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●えのさんのクルージング案内


           関門橋                        平戸城


コクピットの中に限らず、そこらじゅう熱く、身の置き所がない。ビールは池島沖で飲み尽くしてしまった。日陰も冷蔵庫もないレース艇はツライ……

その太陽が水平線へ沈み始める。まもなく空が黄金千貫から黄金金時、薩摩紫へと変わるとともに星がきらめきだし、その数が徐々に増してくる。南の空から一面に輝き始め、やがて星と星の間に漆黒の闇が有るような感じがしてきた。こんなに星が有ったのか……

正直オドロイタ。40を過ぎたオヤジが二人して夜空を見上げ、口をポカンと開けて見入っている。はなはだオゾマシイ光景。艇の上には2人だけだったので、涙を誰にも見られずヨカッタ。

 坊の岬を回航。しばらして枕崎の西方、立神瀬(右の写真)をセールと勘違いし、40いや50フィートだと言い合い、近づくにつれてデッカイ石と確認し大笑い。海図を見れば判るのに。その後、枕崎港へ人港。カツオ館前の突堤に接岸。隣の漁船のオジジに止めていいかと聞くと、スキニスルトヨロシの返事。聞くと、避難港は外来艇に優しいらしい。

見たことの無い風景、安心できる泊地...これなら巡航は愉しいはず。このアトは、避難港を利用していこう──これがクルージングを始めたきっかけです。はるか昔、福岡・小戸から鹿児島までレース回航の1日目の出来事。マム36ダブルハンドでの航海でした。

 

九州西岸の対馬海流にのって南から北に寄港できる港を紹介します。昔から多くの文化や人が流れ着いた地域ですのでナカナカ興味深いトコロデス。まず、

 ■坊津(ぼうのつ)

 進入して左が泊(とまり)/泊浦、右が津(つ)/坊浦。
 津に向かいます。正面の小さな港の手前にある土木工事船の泊地にスタンアンカーで槍着け。
 海水の透明度が高いので驚きますが、水深かなりあります。上陸して左、上り坂の手前に小さな魚屋さんがあります。ここのジイサン、なかなかの人気者。福岡の大学スキューバクラブのオネエチャン達のアイドルです。鑑真記念館はその先。

北上し野間岬をかわして東進し、

野間池

噴火湾を開削した港なので水深かなりあり錨泊難あり。
 入港して左の笠沙えびすの桟橋に着岸し宿泊/人浴するか、もしくは、人港し対面にある岸壁の隅に艇を入れ前後もやいを岸壁ビットに取らせてもらう。

上陸して右へ歩くと寿司屋があります。

漁師さんの溜まり場で、ここで漁師と仲良くなると何かが起こる。

私の場合。朝5時に起こされてカツオをドドッと10何匹かをコクピットに放り込まれました。親切は有りがたいけど、そのあと大騒ぎでした。

甑列島、皆ご存じでしょうから割愛。

ただ里村の町営浴場フロントのお姉ちゃん、ねばって彼女の愛車を拝借、永目の浜を見学ドライブしたことがある。

■鹿児島・蔵の元

フェリー岸壁の反対側に着岸。民宿のオヤジは話し好き。食事・入浴はこちらにお願いすると愉しい。
 湾奥のBG艇庫手前に錨泊するか、もしくは入港しアンカー打ちの方法もあります。ただし港内はアンカーラインが錯綜しているのでそのつもりでガンバレ。

長島海峡

南から掘飛瀬、生田瀬、みはる瀬と名所旧跡が本渡まで続いて、興味がつきず愉快。
[注:
〜瀬はヨットが座礁したところ。AYCでは艇名/オーナー名をとって命名]

 ■牛深港

就航していた高速船が無くなったので桟橋の利用ができます。ただし、陸側はグラスボート用で、使用できるのは沖側。買い出しには便利。風呂は牛深中学先に1軒、天草温泉有り。でも歩ける距離ではなく、旅館を利用する方がベスト。久玉浦の保安庁桟橋近くに槍着けも出来ます。   


天草をとばして長崎へ [天草の港については泊地情報を見てね

■野母港/野母崎漁港

人り口は狭くて浅い。中は広く観光船の桟橋に着艇させて貰えれば、温泉施設が目前で便利。漁師のトッツァン曰く、冬期の北西風強いとき入港難、夏期台風時、漁船が大量に避難するのでヨットは避泊断られるかも。 

・脇岬港:行ったことが無い。いつか行ってみたい港。

 ・軍艦島/高島/伊王島/長騎出島/サンライズ福田/池島:
 何も目新しくもナシ。皆さん良くご存じでしょうから割愛。
 

・松島水道:狭い上に変針点が4つ有り。フェリー一が3カ所から殺到し、サービスとして高速船まで突人する、なかなかスリルのある所。愉快だから一度は通って見てください。楽しめます。 


マイル船(沿岸仕様)が五島列島を目指す場合、西彼杵郡崎戸町の大島、江の島、平島と、島伝いに航海をすることになります。そこで順を追って各島を紹介します。この島々は昔大村藩だったためか五島との関係は薄くローカルの替さんは皆、佐世保を向いています。

江の島

島の東に暗岩・洗岩多数あり……佐世保から11便のフェリー。買い出し無理。宿は有。入港はS/SFに洗岩有り。SW方面よりアプローチ、防波堤を通過し左転舵すると正面にスリップウェイ。そこから航路筋までが避難港部で、倉岳の漁船も良く利用しているようです。
 港奥部は地元船の泊地ですが、船は少ない。

■平島

買い出し無理。宿1軒、有ったはず。ここの入港はSSWより進入、防波堤通過後、前方小島を左に見て通遇。次の防波堤を通過後、右転舵、浮き桟橋通過し、左岸壁最奥に瀬渡し船の泊地有り。そこに混ぜてもらう。そこの手前にフェリー泊地有り。運が良ければフェリーに横抱きさせてもらえる。どちらも駄目なときは最奥の小学校グランド前にスタンアンカー。浅いためかなり沖だし。テンダー必要です。

湾口の小島周辺にアワビ多く、禁漁区ではないみたい。行ってみてください。ちなみに私は獲れませんでした。残念……

 水道、トイレは瀬渡し船泊地前に有りますが、管理を近くの床屋さんがやっているので一言断りを願います(ものすごくやさしい床屋さんです)。

最新情報で訂正:小島の先壊防が大型化され、ここにフェリーが発着し、旧フェリー泊地に外来艇の係船が出来るようになりました。

 平島の南西に相の島が有ります。ここまで本渡より直行すると、私の船で約10時間。そこから2時間で平島です。ここから西へ急潮を横断すると、いよいよ五島列島・頭が島。空港が有ったのですが、現在閉鎮されているようです。頭が島教会は石造建築で、島民と天草の石工たちが明治期に完成させたらしい。

北上し野崎島に至る。

■野崎島

ここは鹿が多い所で、そこかしこに見られる。現在人口2人。野首教会の在所。レンガ造の立派な建造物です。

野崎港は人ってすぐ正面の防波堤に縦列係船。対岸の桟橋に係留するときは、海から見て右側に係船する。たまにキャンプ客を運ぶ連絡船が入るので注意すること。この島は昭和30年代、高度成長政策時代に価値感の変化のため集団離島したところで、その当時の船着場の施設が残っており、そのため水道/便所が完備されています。

夏の時期、少ない艇の水を気にせず素麺を作れるのは有りがたいのですが、先人が丹精込めた段々畑や民家が崩れていくのを見ると複雑な気分となります。

アワビやサザエが多い。でも全面禁漁です。潜水後両手を上げバンザイの形で浮上し「私は密漁していませんよ」とアピールしないとモリを打ち込まれる、と先輩に脅された。『潜るときは海パンを2枚着用しその間に入れること、1枚着用はムフフとなるので禁止』なかなか奥が深い。監視船が常時監視中。

ここの教会建設に逸話が有ります。当時何万かの建設費の為、島民は相当苦労して捻出していた、建設を請け負った鉄川与助以下、大工達は完成後島民達に何かされるのでないかと恐怖を感じたらしいが、完成時に1円札の束で支私いを受けたとき安堵したと伝えられている。


■小値賀島・笛吹港

人港して右側のアワビ館前の桟橋に着岸。めかぶ採集に励んでいると、哀れに思われたか、鯛を箱一杯くれた。ここでは鯛よりイサキが価値が有るらしい。奥の斑島にポットホール有り。一見されたし。見様によってチョツト卑猥。アワビ館は見るだけ。なあんにもない。クジラ漁資料も有ったけど興昧なし。

小値賀島から北上し宇久島に向かう。ここは壇之浦合戦の後、平家の落人達が流れ着いた島。近年、海の駅ヨットハーバーが整備され、居心地のいい所。

■平港

沖の堤防を通遇し左へ整傭されたハーバーが有る。管理している漁協のニイチャン、感じヨロシイ。フェリーターミナルまで橋を徒歩で約10分。ターミナル前に平家武者像有り。これを通過し右折分歩くとスナック有り。ここのマスター、ヨット好きで世話好き。仲良くなって車を借りて島内観光できるかも。船隠しのナントカとか、ぐるっと回っても30分そこそこ。平家の落ち人が何代かして五島を統一して松浦氏を名乗ったらしい。五島文化の発祥地みたい。 

宇久島/小値賀島/野崎島/その他この周辺の小島は北松浦郡で、中通島以南は南松浦郡と行政区が違う……。微妙な雰囲気の違いがおもしろい。

■中通島・奈摩浦

ここのレースは前夜祭でアワビやサザエがどっさり食えると聞いて行ってみた。湾に入ると小島有り。湾奥からスタートし、この島を周回、行ってこいのレース。前夜祭は地元の人が大歓迎してくれて大感謝する。

この湾東岸の上に青砂が浦教会があり、これも美しく有名な建築物です。風呂は老人集会所へ。一日毎交互に男女の入浴口が変わるので運が良ければ入れてもらえる。 

中通島の西岸を南下し、祝言島を右に見て青方湾を横断し、串島の西岸を回って若松港へ向かう。ここの水遭は福岡から福江までの大型フェリーの航路の為、注意が必要。私はこの船に追いかけられて冷や汗たっぷり……結構狭い水路なのに、かなりの高速で走ってきます。まあ航路を譲ればイイケドネ。

■若松港

フェリー桟橋に着岸出来ます。桟橋奥にヨット1隻と潜水母船が定係しており、その側へ。釣り具屋さんやスーパーあり。氷・食料等調達可能。

出港し、橋をくぐってから目前の小島の左右どちらを行くかでちょっと悩みつつ、奈良尾港へ向かう。ちなみに高遠フェリーは小島を左に見て進む。福江港は南です。我々は反対方へ。どっちでもヨロシイヨウデ。

■奈良尾港

 奈良尾は温泉あり。北港・赤灯台側の堤防へいったん着けて様子を見て、移動をかける。


いったん佐世保に戻る。

■鹿子前泊地
 ここは西海パールシーリゾートとして整備。観光・買物なんでも
OK。九十九ホテルの先にスパ施設もあり便利。クルーとの待ち合わせにも便利です。2時間でハウステンボス、1時間で市民ハーバー、30分で佐世保マリーナ等々、整備も安心です。

大村湾へ向かい、針尾瀬戸を抜ける。「ニイタカヤマノボレ」を発信した信号塔を跳めながら、西海橋の下へ。大潮反流時に向かうと楽しい。弁天島の段差潮流を避けて迂回し、反流を捜しながら走ると、どうにか旧橋の下までは進入できるけど……橋をくぐれないときは手前右手の袋湾へ防波堤に横抱きする。潮待ちの係船環がずらりと並んでいるので自由に繋げる。

近くのジジババとお茶でも飲みながら世間話を3〜4時間、そのうち潮も収まる。

大村湾に人り、左岸にそって進む。小さな港あり。テンボスの係船料がモッタイナイ時はここへ。ハウステンボスは省略します。各位様のお好みです。私は大好きなハーバーです。

大村湾を時計まわりに南下する。そこここに暗岩あり。指標は完備されているので、あなたの性格を試す絶好の機会です。「船長は常に正しい」……座礁すれば、大笑いできる。

■川棚港、東彼杵港

 東彼杵港には入れるけど、何にもない。エレナが有るので買い出しは
OK。大村空港にヨツトクラブ有ります。レースもやってくれてます。感謝。

■時津港

大村湾南端。ふゆう(ST34)他、数艇繋いでます。

■ウェスタンマリーナ

私が長崎で初めてレースに参加させてもらったNBC CUPの開催地。『鳳』で3位だった。


佐世保に戻り、鹿子前を出港。南九十九島北西端のオジカ瀬を左に見てすすむ。

すぐに、黒島(遠藤周作が愛した島、『沈黙』の舞台の一部です)。

クルスが訛って黒島と言われるようになったと聞いた。全島民クリスチャン。ここの協会もすばらしい建築物。

黒島を右に見て通過し、凧揚げ瀬に方位を合わせ、しばらく進む。手前で右転舵。北九十九島に向けて転針。歌が浦を右に見て平戸島へ。

瀬戸を北進し、大橋の手前で左転舵、河内港へ向かう。

ここは、鄭成功、生誕の地。生誕500年記念レースに参加。前夜祭、大いに盛り上がる。この地の人は鄭成功をいまでも先生と呼び、尊敬している。

河内港には係船する余地はなく、常時つながれている作業船に横抱きさせてもらう。ここの名物は河内蒲鉾。鰯や飛び魚が原料で鳴門巻の形をしている。美味。

このレースではメタクサ(小戸)に乗艇する。現役福岡大ヨット部員の協力もあり、始めてファーストホーム/総合優勝を経験する。

平戸港

観光桟橋へ。この桟橋は常設フェンダーがものすごくデカイ。よって、短足の私には不安が残るので、的山大島行きフェリーに横抱きさせてもらう。明朝5時までです。その他は対岸の保安庁前へ横着け。

風呂はすぐ上、某有名観光ホテルへ貰い湯。この大浴場は脱衣場の作りが優れもので、男湯脱衣場のある一角から窓ガラスの反射で女湯の脱衣場の中を前も隠さず堂々とカッポするネエチャンが……。

平戸城・オランダ商館・紐差天主堂等々、観光するには時間がかなり必要かも。この地には海商・王直の居宅跡も有るらしい。東シナ海を舞台に日本人とともに活躍した人の生涯は先の鄭芝龍/白龍親子、また元寇の乱に多くの犠牲を払いながらも戦った松浦/呼子一族などとともに、白石一郎や元スナイプ・チャンプにして紀州ヨット少年団の故二宮隆雄氏らが書いている小説を一読してからこの海域を巡るとまた違った趣が感じられるかも。
 


余談だらけですが、正規の平戸商館に対し、密貿易の拠点として、河浦や潮深の地名が文献に出てきます。対馬海流の流れている地域は当時の交通事情では隣町の感覚だったのでしょう。方言も一緒。気性も良く似ているし、極めつけは似たような浦が有るとすると、その周辺の地名は不思議と似通った地名です。

西海をぶらぶらすると、手頃な距離を置いて島々が点在し、海は比較的穏やかだし、そこそこ外洋の気分も味わえる。

また、中世期の海人達の活躍やイエズス会の漂着、平戸商館閉鎖に長崎開港、幕末の志士達の往来、明治後期からのキリスト教徒の五島移住や教会建設、帝国海軍軍港築港、そしてU.S. NAVYの駐留。

この海は私にとっては興味が尽きず、西海詣ではまだまだ終わりそうにない。

 五島についてはまだまだここに書いていないおもしろいことがたくさん有ります。ただ,西海をめぐる巡航は、私の場合,職業柄、建築物に興味が尽きず……寄港先が偏ってしまい、ゴメンナサイ。


 この他、宗像大島、姫島、別府、伯方中島、愛媛・三島、鹿児島火山めぐり等、楽しいクルーズが盛りだくさんのヨットライフでしたが、あと数年で60になる人生、これからもっと楽しみたいと思います。


 

 

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